サンリックコラム

vol.01

レアメタルの話や業界のトレンド、サンリックの日常など、ざっくばらんなテーマをコラム形式で掲載していきます。不定期更新。

素材あれこれ

今、タングステンが面白い?

2021/01/28

一般に、元素名は、産出した地域名、発見者、元素の性質などに因んで命名されることが多い様で、このテーマだけでも本が一冊書けそうですが、今日は、先端技術には不可欠のタングステン(元素記号:W)について、取り上げてみます。

タングステン(Tungsten)のスペルからは、元素記号はTとかTuが相応しいと思われますが、 何故かWとなっています。ウィキペディアによれば、タングステンとは、発見者カール・ヴィルヘルム・シューレの母国語、スエーデン語で、『重い石』と言う意味だそうで、何故、元素記号がWなのかは、タングステン鉱石(ウォルフラマイト;Wolframit)が、スズ鉱石からスズを 精製する際に、この鉱石が入って居ると、スラグを作って、スズをオオカミ(Wolf)の様に むさぼり食べると言う意味で、ドイツ語のWolframに因んで、Wがタングステンの元素記号になった様です。

さて、タングステンが他の金属と比べて、著しく異なる特性は:

  • 金属中融点が最も高く3410℃(文献に依り誤差あり)であること
  • 蒸気圧が低い事(真空中で加熱されても蒸発し難い)
  • 金属中で、熱膨脹系数が小さい事
  • 非常に硬い金属だが、極細線に加工出来る事(Wフィラメント)
  • 比重が金とほぼ同等で、19.3g/㎝3(室温付近)で重いこと
  • プラズマ・エロージョン耐性に優れている

この様な特性を満たす金属は、タングステン以外になく(兄弟金属のモリブデンは、やや似通った特性を持っていますが)、現代社会に必須の元素です。それらについて、以下に触れて行きます。

国家の基幹産業である、鉄鋼業には、強度、硬度、耐食性を高める為に、タングステンやモリブデンが、フェロタングステン、フェロモリブデンとして、元素添加用に多量に使用されております。 また、鉄鋼だけに限った訳ではありませんが、切削用にタングステン・カーバイド(WC)が、 自動車、機械工業、鉱山工業に利用されており、他の炭化物、炭窒化物(WC+TiC、TaC、TiCN)をコバルトや鉄などのマトリックス中に分散させております。これらの工具の加工には、更に硬いボロン・ナイトライドやダイアモンド工具が使用されます。 又鉄鋼材の接合には、TIG溶接法等が有り、この電極材も耐熱性のあるタングステン電極が使用されています。

重電機工業では、Cu-WC、Ag-WC等の大型のサーキット・ブレーカー用の接点材料や、パワーダイオード、サイリスタ、IGBT、パワー半導体の放熱基板として、W、W-Cu等のプレートが使用され、商業用発電装置のタービン・ブレードに使用されるスーパーアロイにはタングステンが 合金添加剤として使用されています。

これら発電用ガスタービンからのNOxのや、化学プラント、セラミックプラントからの排気ガス浄化には、ハニカム状のTiO2-WO3-V2O5 セラミックが利用されています。 WO3は、触媒機能の他に、エレクトロクロミック特性が有り、ITO(透明導電膜)で電極をつけ、 電圧を印加するとWO3がW20O58代り、濃い青色に変化し、光を一部遮断いたします。 防眩ミラーや、スマート・ウィンドウ、表示装置などの用途が考えられます。

照明革命と言われたLEDは、タングステンフィラメントの需要を削減しましたが、LEDの基板や シリコン・オン・サファイア(SOS)の基板であるサファイア(Al2O3)の単結晶製造には、タングステンルツボが必須です。サファイアの融点は2072℃ですので、アルミナを溶かす安価なルツボは、タングステンを除いて他に有りません。

半導体やカラー・ディスプレイの製造には、高真空中で様々な薄膜を積層しますが、これらの 素材を真空中で加熱・蒸着するには、タングステンヒータールツボボートが必要です。 タングステンは、パソコンの心臓部となる半導体(CPU)の製造にも、ヴィア・プラグ材や、ゲート材として、W、WSix(タングステン・シリサイド)膜等が、スパッタリングや、CVD法で作成されております。これは、タングステンが;

  • 低電気抵抗
  • 低ストレス
  • 耐熱性
  • 良好なステップ・カバレッジ
  • シリコンに近い熱膨張係数
  • 良好なエレクトロマイグレイション耐性
  • シリコンへの低接触抵抗

等の性質を保持しているからです。

又、5G通信時代に使用されるBAWフィルター電子部品にも、弾性波反射板として、タングステンの薄膜が利用されています。

タングステンは、このほか医療用機器のX線発生用ターゲットとして、放射線を防ぐ鉛の代用として、又趣味の釣りや、ダーツ、ゴルフボールなどにも、比重の大きさを利用して使用されたり、最近は装飾用にも利用されております。 比重の重さは、航空機のバランサー用の錘としても利用されており、ロケットや特殊な砲弾の 先端部に使用されたりもしております。

又、21世紀のエネルギーとして熱核融合が国際協調のもと、研究されておりますが、プラズマ閉じ込めの反応炉の部材としても、タングステンが利用されております。

さて、タングステンの供給先は、中国が大半で、政治的に利用(悪用?)されたり、する事も有り、BCP上、素材の確保には注意が必要ですし、紛争国からの輸入は、他の鉱物同様に禁じられております。

最後に、金(ゴールド)との比重が近いことから、タングステンに金メッキした偽のゴールド・ インゴットも有りますので、ご注意ください。

如何でしたか、タングステンって、面白いでしょう?

(顧問 郷)

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